街中で電動バイクを見かける機会が少しずつ増えてきました。ガソリン価格の高騰が続く中で、電気で走るバイクの経済性に魅力を感じているライダーも多いはずです。しかし、実際に購入するとなると、車両本体の価格だけでなく、その後の維持費やメンテナンスの手間がどう変わるのかが気になるところです。ガソリン車と比べて本当にお得なのか、整備は楽になるのか。今回は、電動バイクとガソリン車のランニングコストやメンテナンス性の違いについて、具体的なポイントを挙げながら比較していきます。
エンジンがないことで激変する消耗品の常識
ガソリン車から電動バイクに乗り換えたときに最も驚くのは、メンテナンスが必要な項目の少なさでしょう。その最大の理由は、内燃機関であるエンジンが存在しないことにあります。ガソリン車であれば、定期的なエンジンオイルの交換は必須ですし、それに伴ってオイルフィルターやエアクリーナー、点火プラグといった消耗品も交換時期を管理しなければなりません。また、エンジンの動力をタイヤに伝えるためのドライブチェーンやベルト、スプロケットなどの駆動系パーツも、走行距離に応じて摩耗していくため、清掃や注油、交換といったメンテナンスが欠かせません。
一方で電動バイクは、モーターとバッテリーという非常にシンプルな構造で動いています。そのため、エンジンオイルやフィルター類はもちろん不要です。さらに、多くの電動バイクはモーターがホイールに内蔵されているインホイールモーター方式や、メンテナンスフリーのベルトドライブを採用しているため、チェーン調整や注油といった汚れ作業から解放されることが多いのです。部品点数が圧倒的に少ないということは、それだけ故障する箇所が減るということでもあり、メカトラブルに詳しくないライダーにとっては精神的な安心感にもつながります。
もちろん、タイヤやブレーキパッド、ブレーキフルードといった、走る・曲がる・止まるに関わる基本的な消耗品はガソリン車と同様に存在します。しかし、電動バイクには減速時にモーターを発電機として利用し、バッテリーを充電する回生ブレーキという仕組みが備わっているモデルが多くあります。この回生ブレーキがエンジンブレーキのような役割を果たすため、物理的なブレーキの使用頻度が減り、結果としてブレーキパッドの寿命がガソリン車よりも長くなる傾向にあります。
日々の財布に優しいエネルギーコストの真実
維持費の中で最も実感しやすいのが、日々のエネルギーコストの違いです。ガソリン車の場合、燃費の良い原付一種や二種であっても、給油のたびに数百円から千円程度の出費が発生します。長距離を走るライダーであれば、月々のガソリン代は決して無視できない金額になるでしょう。また、ガソリンスタンドまでわざわざ足を運ばなければならない手間も、忙しい現代人にとっては見えないコストと言えます。
これに対して電動バイクの電気代は、ガソリン代と比較して圧倒的に安価に済みます。契約している電力プランやバイクのバッテリー容量にもよりますが、フル充電にかかる電気代は数十円程度というケースがほとんどです。同じ距離を走行した場合のエネルギーコストで比較すると、電動バイクはガソリン車の数分の一から十分の一程度に収まることも珍しくありません。特に自宅に充電環境を整えることができれば、帰宅してプラグを差すだけで翌朝には満タンになっているため、ガソリンスタンドに行く時間と手間を完全に節約できます。
ただし、長期的な視点で見た場合には注意が必要です。それはバッテリーの寿命と交換費用です。スマートフォンのバッテリーが長年使っていると劣化するように、電動バイクのバッテリーも充放電を繰り返すことで徐々に性能が低下し、航続距離が短くなっていきます。数年から数万キロ走行した後にバッテリーを新品に交換する場合、その費用は数万円から十数万円と高額になることがあります。日々の電気代で浮いた分を、将来のバッテリー交換費用の積み立てと考えておくのが賢明な付き合い方かもしれません。
税金や保険料から見るトータルの維持費
車両そのものの維持費以外にも、バイクを所有するだけでかかる税金や保険料についても見ていきましょう。まず軽自動車税ですが、電動バイクはエンジンの排気量ではなく定格出力によって区分が決められています。例えば、定格出力0.6kW以下の電動バイクは原付一種(50cc以下)扱いとなり、税額はガソリン車と同等です。しかし、区分によってはガソリン車よりも割安な税額設定が適用されるケースもあり、所有コストをわずかながら抑えることができます。
自賠責保険や任意保険についても、基本的にはガソリン車の排気量区分に準じた定格出力区分で加入することになります。例えば原付一種扱いの電動バイクであれば、ファミリーバイク特約を利用して自動車保険に付帯させることも可能です。このあたりはガソリン車と大きく変わらないため、乗り換えによる保険料の劇的な変化はあまり期待できないかもしれません。しかし、一部の保険会社では、環境に配慮したエコカー割引の一環として、EVバイク向けの割引プランを用意している場合もありますので、契約前に確認してみると良いでしょう。
総合的に見ると、電動バイクは日々のランニングコストや定期的なメンテナンス費用においては、ガソリン車よりも確実に安上がりで手間がかかりません。初期費用の高さや将来的なバッテリー交換のリスクさえ許容できれば、経済的でクリーンなバイクライフを送ることができるでしょう。特に、毎日の通勤や通学で決まった短距離を走るような使い方であれば、そのメリットを最大限に享受できるはずです。自分のライフスタイルと照らし合わせながら、賢い選択をしてください。
