国内バイクメーカーで共同開発
ヤマハとホンダ、スズキ、カワサキの国内主要バイクメーカーが、2023年5月11日に「水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合」の認可を経済産業省から取得したと発表した。
略称は「HySE(ハイス)」で、このワードで検索すれば現状の研究結果などを知ることができるだろう。
脱炭素社会は世界全体の課題になっており、バイクを含めたモビリティの世界では、特定のエネルギーに依存するのではなくマルチパスウェイへの取り組みに力を入れている。
その一環として注目されているのが、水素を使ったエンジンの開発である。
水素は次世代エネルギーとして、モビリティ業界では強く期待されているのだ。
HySEの枠組みで、各メーカーが分担して水素エンジン開発を進めていく形になる。
水素エンジンのモデルベースの開発はホンダが担当し、要素研究はスズキが担当、水素エンジンの機能や性能、信頼性向上の役割を担うらしい。
ヤマハとカワサキは実機研究を担当する形だが、検討項目は異なってくる。
ヤマハは水素充填機系統や水素タンクの小型モビリティ向けの要求部分を検討する一方、カワサキでは燃料供給システムやタンクに関連する機器、タンクからインジェクタ間にレイアウトされる機器の検討を担当していくのだそうだ。
水素エンジンの抱える課題とは?
国内の主要メーカーが共同で水素エンジンを研究するのは、水素エンジンにはいろいろと乗り越えなければならない課題があるからである。
まずは水素の性質的な問題だが、水素は燃焼速度が速い反面、着火領域が広いために燃焼状況が不安定になりがちだ。
すると、エンジンが安定して機能しない恐れがある。
また、水素エンジンとしての技術的な課題もある。
水素エンジンで走行するためにはそれなりの燃料を搭載する必要があるが、バイクの場合、燃料を搭載できるスペースがもともと狭い。
このため、どう燃料供給システムを確保するかといった問題も出てくるわけだ。
そこでHySEが設立されたというわけである。
各メーカーがガソリンエンジンの開発で培ってきたノウハウや技術を連携することで、水素エンジンの抱えている課題を克服しようとしているのだ。
HySEはヤマハとホンダ、スズキ、カワサキがメインとなって基礎研究を行うが、そのほかにも特別組合員として川崎重工とトヨタも参画している。
川崎重工はHySEのマネジメントを担当し、トヨタは四輪車用の大型水素パワーユニット開発で培ったノウハウを提供していく。
もし二輪車向けの水素エンジンができれば、小型漁船や軽飛行機、重機、さらにはドローンなどにも転用できるかもしれないと言われている。
水素のエネルギーへの本格的な活用も、現実味を帯びてくるというわけだ。